離婚に伴う財産分与は注意が必要です

非公開採決事例 令和3年4月22日東裁(所)令2第75号
離婚に伴う財産分与がなぜ譲渡所得になるか争われた事例
国税速報 令和4年5月9日第6705号

概要

この事例は、審査請求人が、所得税等の期限内申告をした後、離婚に伴う財産分与に係る分離課税の長期譲渡所得の金額を修正申告をしたが、その財産分与は所得税法33条<譲渡所得>1項に規定する「資産の譲渡」に当たらないとして更正の請求をしたのに対し、税務署長が、更生をすべき理由がない旨の通知処分をしたものである。

請求人主張

請求人は、審査請求において、次の通り譲渡所得は生じていないと主張

1:離婚に伴う財産分与は、すでに夫婦が実質的に共有していた全財産の分割に伴う名義の変更にすぎないから、「資産の譲渡」には該当しない。
2:請求人は、財産分与によって元配偶者から金銭を受領しておらず、財産分与によって請求人に経済的利益が生ずることはないから、譲渡所得の計算上収入金額に算入すべき金額はない。
なお、土地の値上がり益は、分与を受けた元配偶者に引き継がれ、元配偶者が売却したときに元配偶者の譲渡所得として課税されるものである。

国税不服審判所の判断

国税不服審判所は請求人の主張を認めず、審査請求を棄却した。
審判所は、夫婦の一方の特有財産が離婚に伴う財産分与として他方に分与され、当該他方がそれを取得する場合には、当該一方の特有財産が当該他方の有する財産となるため、そこに資産の移転、すなわち資産の譲渡が存することは明らかであり、離婚に伴う財産分与は、「資産の譲渡」に該当すると判断した。
また、財産分与として不動産等の資産を分与した場合、分与者は、これによって、分与義務の消滅という経済的利益を享受したというべきであり、当該敬愛的利益の価額は、分与者の「収入すべき金額」になると判断した。

所得税法等

所得税法

(譲渡所得)
第三十三条 譲渡所得とは、資産の譲渡(建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権の設定その他契約により他人に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるものを含む。以下この条において同じ。)による所得をいう。

所得税法基本通達

(譲渡所得の基因となる資産の範囲)
33-1 譲渡所得の基因となる資産とは、法第33条第2項各号に規定する資産及び金銭債権以外の一切の資産をいい、当該資産には、借家権又は行政官庁の許可、認可、割当て等により発生した事実上の権利も含まれ

(財産分与による資産の移転)
33-1の4 民法第768条《財産分与》(同法第749条及び第771条において準用する場合を含む。)の規定による財産の分与として資産の移転があった場合には、その分与をした者は、その分与をした時においてその時の価額により当該資産を譲渡したこととなる。
(注)
1 財産分与による資産の移転は、財産分与義務の消滅という経済的利益を対価とする譲渡であり、贈与ではないから、法第59条第1項《みなし譲渡課税》の規定は適用されない。
2 財産分与により取得した資産の取得費については、38-6参照

(分与財産の取得費)
38-6 民法第768条《財産分与》(同法第749条及び第771条において準用する場合を含む。)の規定による財産の分与により取得した財産は、その取得した者がその分与を受けた時においてその時の価額により取得したこととなることに留意する。

民法

(財産分与)
第七百六十八条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。
3 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。

財産分与(法務省)

離婚から2年の期間制限があります。

Q1 財産分与とはどのような制度ですか

(A)
離婚をした者の一方が他方に対して財産の分与を請求することができる制度です。
財産分与は,(1)夫婦が共同生活を送る中で形成した財産の公平な分配,(2)離婚後の生活保障,(3)離婚の原因を作ったことへの損害賠償の性質があると解されており,特に(1)が基本であると考えられています。

Q2 財産分与の額はどのように決めるのですか。

(A)
夫婦の財産の清算を基本として,Q1で述べた(2)と(3)の要素も考慮しながら,まずは当事者間の協議によって金額を決めることになります。
当事者間で協議が調わないときや,協議をすることができないときは,家庭裁判所に調停又は審判を申し立てることができます。
家庭裁判所の審判では,夫婦が働きをしているケースと,夫婦の一方が専業主夫/婦であるケースのいずれでも,夫婦の財産を2分の1ずつに分けるように命じられることが多いようです。

裁判所における財産分与の手続の概要についてはこちら (裁判所のサイトに移動します。)

Q3 財産分与の対象となる財産は,夫婦共有名義の財産ですか。

(A)
夫婦のいずれか一方の名義になっている財産であっても,実際には夫婦の協力によって形成されたものであれば,財産分与の対象となります。
例えば,婚姻中に夫の収入で土地建物を購入して夫の単独名義になっている場合であっても,妻が家事等を分担して夫を支えていたときは,その土地建物は,実質的には夫婦の財産といえると考えられます。

Q4 財産分与はいつすればよいですか。

(A)
離婚までに協議をしておき離婚と同時に分与してもよいですし,離婚をしてから分与を請求することもできます。
ただし,離婚から2年が経過すると,家庭裁判所に申立てをすることができなくなりますので,ご注意ください。

詳細は法務省のホームページを参照してください。

まとめ

結婚するとき以上にエネルギーに係る離婚手続き。
できれば避けて通りたいですね。
夫婦円満に日々を過ごすことに心がけることが何よりです。
そうはいっても、離婚になる場合は、様々なことに注意が必要です。
財産分与した上で、納税額が重くのしかかる場合があります。
その点も考慮して冷静な対応が求められます。

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