事業再構築補助金:業種転換
2021/03/24
中小企業等事業再構築促進事業の業種転換について考察してみたいと思います。
事業再構築補助金については下記を参照ください。
https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/index.html
業種転換の定義
中小企業等が新たな製品を製造することにより、主たる業種を変更すること
業種転換とは、中小企業等が新たな製品を製造し又は新たな商品若しくはサービスを提供することにより、主たる業種を変更することをいう。
重要なのは
2:主たる事業は当然変更になる
ということです。
総務省の日本標準産業分類は下記を参照ください。
https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/sangyo/H25index.htm
業種転換に該当するために
3要件
1:【製品等の新規性要件】業種転換に該当するためには、新たな製品等を製造等する必要があります。
事業を行う中小企業等にとって、事業により製造する製品又は提供する商品若しくはサービスが、新規性を有するものであること。
※新分野展開と同様。
2:【市場の新規性要件】業種転換に該当するためには、新たな市場に進出する必要があります。
事業を行う中小企業等にとって、事業により製造する製品又は提供する商品若しくはサービスの属する市場が、新規性を有するものであること。
※新分野展開と同様。
3:【売上高構成比要件】業種転換に該当するためには、3-5年間の事業計画期間終了後、新たな製品の属する業種が、売上高構成比の最も高い業種となる計画を策定することが必要です。
事業計画期間終了後、新たに製造する製品又は新たに提供する商品若しくはサービスを含む業種が、売上高構成比の最も高い業種となることが見込まれるものであること。
※新分野展開とは違い、売上構成比が最も高くなる業種が重要な要件です。
業種転換の要件を考え方
具体例1:賃貸業の場合
レンタカー事業を営んでいる事業者が、新たにファミリー向けのコロナ対策に配慮した貸切ペンションを経営し、レンタカー事業と組み合わせた宿泊プランを提供することで、3年間の事業計画期間終了時点において、貸切ペンション経営を含む業種の売上高構成比が最も高くなる計画を策定している場合。
製品等の新規性要件
1:過去に製造等した実績がないこと
過去に貸切ペンション経営を営んだことがなければ、要件を満たす。
2:製造等に用いる主要な設備を変更すること
ペンションを改築するため、新たに建物改修等が必要であり、その費用がかかる場合には、要件を満たす。
3:競合他社の多くが既に製造等している製品等ではないこと
レンタカー事業を営んでいる競合他社の多くが、貸切ペンション経営を行っていないことを説明することで、要件を満たす。
4:定量的に性能又は効能が異なること
貸切ペンション経営とレンタカー事業では、提供するサービスが異なり、定量的に性能又は効能を比較することが難しいことを示すことで要件を満たす。
市場の新規性要件
1:既存製品等と新製品等の代替性が低いこと
レンタカー事業と貸切ペンション経営は、関係性が薄いサービスであり、新たに貸切ペンション経営を始めたことで、レンタカー事業の需要が代替され、売上高が減少するといった影響が見込まれない(むしろ相乗効果により増加する)と考えられることを説明することで、要件を満たす。
2:既存製品等と新製品等の顧客層が異なること
例えば、レンタカー事業と一体的に貸切ペンション事業を提供することで、日帰り客向けから宿泊客向けにターゲットを切り替えることを説明することが考えられる。
売上高構成比要件
1:3-5年間の事業計画期間終了後、新たな製品の属する業種が、売上高構成比の最も高い事業となる計画を策定すること
「レンタカー」(不動産業、物品賃貸業)と「ペンション経営」(宿泊業,飲食サービス業)は、日本標準産業分類の大分類ベースで異なる分類がなされている。
従って、3年間の事業計画期間終了時点において、ペンション経営を含む業種の売上構成比が最も高くなる計画を策定していれば、要件を満たすこととなる。
具体例2:製造業の場合
コロナの影響も含め、今後ますますデータ通信量の増大が見込まれる中、生産用機械の製造業を営んでいる事業者が、工場を閉鎖し、跡地に新たにデータセンターを建設し、5年間の事業計画期間終了時点において、データセンター事業を含む業種の売上高構成比が最も高くなる計画を策定している場合。
製品等の新規性要件
1:過去に製造等した実績がないこと
過去にデータセンター事業を営んだことがなければ、要件を満たす。
2:製造等に用いる主要な設備を変更すること
データセンターを建設するため、新たにデータサーバーの購入等が必要であり、その費用がかかる場合には、要件を満たす。
3:競合他社の多くが既に製造等している製品等ではないこと
同種の生産用機械を製造している競合他社の多くが、データセンター事業を行っていないことを説明することで、要件を満たす。
4:定量的に性能又は効能が異なること
生産用機械とデータセンターは、異なる製品(サービス)であり、定量的に性能又は効能(強度や軽さ等)を比較することが難しいことを示すことで要件を満たす。
市場の新規性要件
1:既存製品等と新製品等の代替性が低いこと
生産用機械の製造とデータセンター事業は、関係性が薄いサービスであり、新たにデータセンター事業を始めたことで、生産用機械の需要が代替され、売上高が減少するといった影響が見込まれないと考えられることを説明することで、要件を満たす。
2:既存製品等と新製品等の顧客層が異なること
例えば、製造業の川上事業者から、クラウドサービスを利用する個人顧客に変わること等を説明することが考えられる。
売上高構成比要件
1:3-5年間の事業計画期間終了後、新たな製品の属する業種が、売上高構成比の最も高い事業となる計画を策定すること
「生産性機械製造」(製造業)と「データセンター事業」(情報通信業)は、日本標準産業分類の大分類ベースで異なる分類がなされている。
従って、5年間の事業計画期間終了時点において、データセンター事業を含む業種の売上構成比が最も高くなる計画を策定していれば、要件を満たすこととなる。
業種転換の非該当例
例えば、次の1.又は2.に該当する場合、業種転換に該当しない。
2:事業の前後で売上高構成比の最も高い事業が日本標準産業分類に基づく大分類の単位で変更されない場合
まとめ
新分野展開及び事業転換よりも難易度が上がります。
業種を転換するのはかなりの決断が必要です。
いままで進出していない業種に進出するので、事前準備は念入りに行う必要があります。
既存の業種での成長の可能性が本当にないのか。
既存の業種をすてる覚悟はあるのか。
選択する業種は正しいのか。
重大な経営判断になります。
重い経営判断をおこない、かつ、実行する覚悟が求められます。